短編

短編 List-2

今日も彼は機嫌よく

機嫌が良すぎて気味が悪い。 セーフハウスを訪れるなり開口一番、大変失礼なことを述べてきたマサキにしかしチカは無言でうなずいた。マサキの反応は真っ当だ。実際、その通りなのだ。先日の一件以来、チカの主人はたいそう機嫌が良かったのである。「だって...
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その手のひらに

表舞台に立つのは某国政府とそれに対立する武装組織。舞台裏ではそれぞれを支援する国々と複合企業コングロマリットが流血で淹れたアフタヌーンティーとオイルで焼いたスコーンに舌鼓を打っている。 最初から短期間で終わる任務だとは思っていなかった。だが...
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逆さまの木

バオバブ。別名「逆さまの木」は非常に太い幹を持ち記録された最大の円周は四七メートルにも達する。寿命においては二〇〇〇年にも及びアフリカなどに存在するバオバブは干ばつに耐えられるよう一〇万リットルもの水を蓄えられるようになっている。バオバブが...
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SF、やめました

「なあ、脳ってほとんど水なのか?」「そうですよ、脳細胞の八〇パーセントは水分です」 どうやら先日発表された地上のニュース記事に興味を持ったようだ。 低温凍結された脳細胞を傷つけることなく解凍することに初めて成功したと発表があったのだ。そして...
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素敵なお買い物

思いのほかキャッシュがたまっていたので少し散財しておこうと思ったそうだ。資産があり過ぎるとそれはそれで始末に困るらしい。「だからってな」 少し、の規模がおかしいだろう。どう考えても。「何で郊外に屋敷一軒まるっと購入してんだよ。しかも管理人付...
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今、その日が

あれから何十年たっただろうか。 目の前には在りし日の年若かった自分が立っている。 古びた教会、その最奥を飾るステンドグラス。 青く紺く碧く燃え盛るステンドグラスの向こう側に隠されたもの、閉じ込められたものは何であろうか。「それを越えて行くの...
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猫が歩けば

犬も歩けば棒に当たる。物事をしようとしている者は思いがけない災難にあう。または思いがけない幸運にあうことの例えとして使われる言葉であるが、地上はともかくラ・ギアスにおいては「猫が歩けば幸運を拾う」というのが正しいようだ。「うまい紅茶くれるっ...
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クレヨン

時にスピーカーもかくやと言わんばかりの大音量でしゃべり倒すチカをシュウは不定期に叩き出した。半分はストレス発散である。だが、チカはめげなかった。主人に似て、けれどはた迷惑な方向に執念深いチカは叩き出されてもなおそのくちばしを閉じようとはしな...
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素朴な疑問

「外科用ロボット?」「ええ。トウモロコシ一粒の皮を極小の針付縫合糸で縫合することに成功したそうです」 外科用ロボット。名前はシャーサリー。「この手術でもっとも重要な点はこれがシャーサリーを専門としない医師によって成されたということです」「つ...