短編

短編 List-2

彼方の古城

いつからここにいるのだろう。 その古城は瑠璃色の湖の中央にあった。だが、城にかかる橋はなく船を付けるための桟橋もない。城は湖に建つ「檻」であった。 城の城主は少年期をようやく終えたばかりの青年であった。城には青年以外誰もおらず、日がな一日、...
短編 List-2

胃がありません、カモノハシさん!

カモノハシ - 鴨嘴 英名 platypusプラプタス Ornithorhynchus anatinus 爬虫類の特徴をとどめる単孔目カモノハシ科の水生哺乳類。 オーストラリア東部とタスマニア島に分布し鳥や爬虫類のように総排出孔を備えるも、...
短編 List-1

市井の人

上辺のラベルしか知らない人間たちにとって風の魔装機神サイバスターの操者であるマサキ・アンドーは良くも悪くも「英雄」のカテゴリに振り分けられる人間であった。特にラングランにおいて彼は魔装機神操者であると同時に「救国の英雄」でもあったのだ。「で...
短編 List-1

逆鱗

「もしも無事に新世界であなたたちの神に出会えたなら伝えておいてください。この世で私に命令できるのは『神あなた』ではなく私だけだと」 末端に用はない。容赦なく自分たちを叩きのめした男はそう言って本部のデータを持ち去った。その無能ゆえに生き延び...
短編 List-1

あなたに贈る

そこは山裾にある小さな洋館だった。主人は七〇過ぎの老夫婦。曾祖父の代から造園業を営んでいて先日息子夫婦から孫夫婦に代替わりしたと聞いた。 家業とは別にもともと庭造りが趣味だった老夫婦の館には四つの庭があった。まず館の正面。二〇〇種類を超える...
短編 List-1

逢魔時

鏡の向こう側は『向こう側』へと続いている。『向こう側』からの来訪者はそう言って笑った。「黄昏時に『鏡』をのぞくのはやめておくがいい。あれはともかくお前はいい匂いがする。すぐに見つかるぞ」 どうせ連れて行くなら賢しいばかりの小僧より可愛げのあ...
短編 List-1

立てこもり中にお邪魔します

不足の事態に備えて持っておきなさい。以前、対魔術用の護身グッズとして贈られたオリハルコニウムの指輪とは別に渡されたキーホルダー。付属のボールペンはガラスブレイカーとして使うことができキャップの中にはチタン製のナイフが仕込んである。「まさかこ...
短編 List-1

言の葉、今足りて

「お前には関係ないだろうがっ‼」 売り言葉に買い言葉だった。そう、ただの売り言葉に買い言葉。けれど、どうしてもそれだけは聞き流せなかったのだ。「関係ない?」 そんなことがあるものか。今回の一件には間違いなくあの邪神が絡んでいるのだ。なのにど...
短編 List-1

密約

収賄罪成立。 密約の対価はラングランでも有数の高級ホテルで催されている期間限定スイーツビュッフェの招待チケットであった。「うわぁ、あからさまな買収だあ!」 差出人不明の「賄賂」にミオは笑いを隠せない。よほど秘密にしておきたいらしい。「まあ、...