短編

短編 List-1

美しい世界は残酷で

それは夢のように美しい世界だった。廃墟の瓦礫はもちろん雪を踏む足音さえ汚れなく美しい。哀れな我が子の軀を前にうなだれる母キツネの後ろ姿すら。 そう、それはただただ美しい世界を描いた残酷なゲームだった。 地上に出たさい友人であるリュウセイ・ダ...
短編 List-1

Doughnut day

マサキは甘いものがそう得意ではない。バレンタインデーでも板チョコが二枚もあれば十分だとぼやくくらいだ。しかし、何事にも例外は存在するもので、「あずきとホイップクリーム……」 ときどき無性に甘いものが食べたくなるときがあるのだ。一種の発作と言...
短編 List-1

それは起こるべくして起こった惨事だった。「途中までは何も問題なかったのよ。それが突然応答がなくなって」 呼ばれた先はセニアの私設研究所だった。 戦闘中に突然意識が混濁状態に陥ったのだという。何度も呼びかけてようやく応答したと思った瞬間に発動...
短編 List-1

千丈の堤も蟻の穴より

「何かあったらすぐに連絡するのよ?」 そう言ってエーテル通信機を渡してきたテュッティは真顔だった。反対に通信機を渡されたマサキの顔からは完全に血の気が引いていた。すでに「保護者」には一切合切ばれていたのだ。「俺の苦労っ⁉︎」 情報の漏洩元に...
短編 List-1

ロンティルフェルト ショコラ

ロンティルフェルト。今年で創業一七〇〇年を迎えるラングランでも老舗の高級食料品店であるが同時に紅茶の高級ブランドとしても有名で、マサキは近所の食料品店でまれに目にすることがあった。あれは地上でいうところの「紅茶の日」と同様のイベントだっただ...
短編 List-1

賢明

その小国は千年近くにわたってラングランの属国も同然だった。ラングランに吸収されずにすんだのは豊富な地下資源——それも【希少金属レアメタル】に恵まれさらに超高度な加工技術を有していたからだ。 王都が壊滅に追い込まれ調和の結界が消失した今、戦争...
短編 List-1

冥き揺り籠、産声はいまだ遠く

立場も方向性も違えど「彼女」たちは一途だ。それが「彼女」たちに対するシュウの率直な感想だった。 ヴォルクルスを打破し長年のわだかまりをひとまず解消して以降、シュウはウェンディとそれぞれの研究について意見を交わすことがままあった。 「会合」は...
短編 List-1

証明

これはいつかのどこかの話「ねえ、知ってるかしら」「何をですか?」 エクセレン・ブロウニング。地球連邦軍北米支部ラングレー基地所属のATXチームパイロット。豊かな金髪を備え艶やかで愛嬌たっぷりの彼女には基地内外を問わずファンが多い。 ここは某...
短編 List-1

それは無慈悲かあるいは慈悲か

それは誰かにとっては無慈悲であっただろう。けれど誰かにとっては確かに慈悲でもあったのだ。果たしてそれは彼らにとってどちらであったのか。 マサキの使い魔であるシロとクロは魔法生物だ。猫の姿をしていながら電子機器INSの修理もできればかんたんな...