2025/06/29 SS-猛毒なので

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SS_List1日記

 特に山もオチもないある日の会話。
「……なあ、こいつらカエルだよな?」
 黄色やオレンジ、ミント。何の色かと言えば体色である。
「カエルですね。これは外敵を遠ざけるための『警告色』と呼ばれる護身術の一種です。わざと目立つ色をしているのですよ」
 地上から持ち込んだ雑誌に載っていたとある絶滅危惧種のカエル。全身オレンジ、ミントという強烈な体色はひと目でマサキを絶句させた。確かにこれだけ強烈な色をしていれば相手もひるむかもしれない。
 当然、こんな強烈な存在を目の前に突きつけられれば好奇心が湧いてくる。
「こいつ名前なんて言うんだ?」
「モウドクフキヤガエルです」
「は?」
「猛毒ですから」
「もうどく」
「猛毒です」
「まさか『ふきや』って……」
「コロンビア先住民のエンベラ族は何世紀もの間、モウドクフキヤガエルの毒を使った吹き矢で狩りをしていましたからね」
 それが名前の由来です。淡々と語るシュウに対しマサキはまたも絶句してしまう。
「どストレートにほどがあるだろっ!」
 もうちょっと頭をひねろ。しかし、
「マサキが言えた義理じゃないんだにゃ」
「にゃいわね。一片もにゃいわ」
「他でもないあなたがそれを言いますか」
 ぼっこぼこであった。

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